『恋は雨上がりのように』45歳男性と17歳女子の恋の行方は?

恋愛
マイナビウーマン
2019/08/31 17:10

今回、マイナビウーマンの「大人の男」特集で私が紹介するマンガは、『恋は雨上がりのように』(作者:眉月じゅん)。主人公の女子高生・あきら(17歳)が、バツイチ子持ちのファミレス店長・近藤(45歳)に出会い、想いを寄せながら成長していく物語だ。

まずはじめに、「かっこいい大人の男」と、あきらが想いを寄せている近藤は、まったくの正反対だと思う。

■さえない中年男性・近藤を好きになったきっかけ

近藤は、さえないファミレス店長。小説家になりたいという自身の夢をいつまで経っても捨てきれない。職場でもお客さんに頭を下げてばかりで、アルバイトの女子高生からは陰で「なんか臭い」と言われている。私服だってダサいし、10円ハゲも気になる。そう、全然かっこよくないのだ。

こんな男、普通好きになるかあ? いや、ならないだろう。今の、大人になった自分でも思わないのだから、あきらと同い年である17歳なんて尚更だ。

でも、出会ってしまった。ある日の学校からの帰り道、急な雨が降りはじめ、あきらが雨宿りのためにたまたま入ったファミレスで。店長である近藤が、サービスでコーヒーを差し出してくれた。

「それだけ?」と思うかもしれないが、2人の出会いは運命でもなんでもない。サービスをした、ただの店員と一顧客とのやり取りだ。

しかし、誰かを好きになってしまうには十分なのだとも思う。人を好きになるきっかけは「それだけで?」と思うような理由ばかりだ。誰かに好意を寄せる一方通行な気持ちなんて、もっとも単純で言葉にしにくい。

■まぶしくこそばゆい、純粋すぎるほどの恋

あきらにとって近藤は、「走る」という最大のアイデンティティーを失った空っぽの自分に差す一縷の光だ。かつて陸上部のエースだったあきらは、ケガをしたことによって、あれだけ好きだった走ることが今は思うようにできない。学校や家で過ごしていると、嫌でも走ることが脳裏に浮かぶ。そんなあきらは、近藤が働くファミレスにアルバイトとして入店を決める。

自分と走ることを切り離してくれた、バイト先のファミレス。そして、自分の痛みや苦しみを知らず、それゆえ遠慮もなく、自分という存在に価値を与えてくれる近藤。ほかの誰でもよかったわけじゃない。あきらの目に映るのは、近藤でなければ絶対に駄目なのだ。

あきらが、近藤のどこを好きなのか、なぜ好きなのか、物語のなかで具体的に語られることはない。しかし、わかってしまう。さえない中年男性だと頭のなかでは理解しているのに、あきらが近藤にどんどん惹かれていく気持ちが。胸のときめきが。

ああ、あきらは近藤の言葉や存在に、どのくらい救われてきたのだろう。真っ直ぐに伸びていく近藤への純粋すぎる好意は見ているこちらもまぶしく、そしてこそばゆい。

■「大人の男」が17歳女子に与えたもの

この物語は、あきらが陸上部のエースとして見事復活を果たし、県大会で新記録を樹立するシーンで終わる。きっと2人は、もう二度と出会うことはないだろう。別々の道を進んでいくことになるのだと思う。

けれど、何かに挫折しそうになったとき、心がぽっきりと折れそうになったとき、過去の思い出のたくさんつまった引き出しから引っ張り出し、互いに背中を押してくれる存在になったのだと思う。

きっとあきらは忘れない。近藤のことを。過ごした日々を。思い出す頻度が年齢を重ねるにつれて減っていくことがあっても、近藤を想う気持ちやもらった言葉を忘れることはないだろう。

ラブストーリーとしてのハッピーエンドは迎えなかった。けれど、まぎれもない恋であり、両想いの姿なのだと思う。

(法律や倫理を無視して)2人が付き合ったり男女の関係になったりする展開が少しでもあったのだとしたら、あきらが大好きな陸上部に復帰することはきっとなかっただろう。

人によって恋の行く末はさまざまだ。成就しなかった恋、なんとなく自然消滅してしまった恋は、おそらく誰にでも経験がある。

17歳と45歳。年の差でいえば、28歳も離れている。この物語が最後まで清潔感を保ったまま読むことができたのは、近藤があきらのことを第一に考え、そして自分の欲に抗うことなく、ひとりの「大人の男」として、彼女にとことん向き合ってきたからだと思う。

(文:あたそ、イラスト:谷口菜津子)

>マイナビウーマン8〜9月特集「大人の男」

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