その7


「‥そっか、良かったじゃん!
泣かないでよ。」







「‥ごめん‥ね、本当に‥ぐっ、ごめん」







電話の後ろからは車通りの音がする。




恐らく、ベランダでこっそり電話しているんだろう。






「いいよ、俺も楽しかったし、なんとなく分かってたし。」









「‥うん。でもね、ケンタロウ、あたしね」







「大丈夫だから‥それじゃ‥ね」





それだけ言ってすぐに切った。





いたたまれなかった。






これ以上まともに会話する自信がなかった。







薄々分かっていた事じゃん

多分付き合えないだろうなって。







肝心な時に、はぐらかされて、決まって





「いい彼女見つけなね♪」





ってお姉さん風吹かせていた。







会った時から。






いや、会う前に初めて声を聞いた時から。







惹かれていた ー





鼻に掛かるようなちょっとアニメちっくな優しい声。





笑っているのに、なぜか見透かしているような猫目。






頷く代わりに目を閉じる癖。





そんな紫布美さんにずっと憧れを抱いていた。







抱く時も






違うコト考えてるなーって思う瞬間も時々あった。








抱き合ってる時もいつか消えてしまうんじゃないかなって。










「大丈夫」って ー。



精一杯言ったつもりだったけど







声が震えてちゃんと言えてなかったかもしれない。






部屋で流れていたTears In Heavenの音量を上げて泣いた。
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